Lk13,31-35

 31 ちょうどその時、あるファリサイ派の連中がやって来てイエスに言うには、「出て行くがよい、ここから去って行くがよい、ヘロデがお前を殺したいと思っているのだから」と。
32 そこで連中に言った、「お前さん達が去って行って、その狐さんにこう言ってやればいい、『見よ、俺は悪霊共を追い出して癒しを完遂する、今日も明日も三日目も、そして完成に導かれる』と。
33 実際はむしろ、俺には今日も明日も次の日も去って行く必要があるのだが。預言者エルサレムの外で果てることはありえないのだから。
 34 エルサレムエルサレム預言者達を殺し、自分に送られた者達を石打にする町よ、何度お前の子らを集めたいと思ったことか、母鳥が自分自身のひな鳥を羽の下に集めるように。だが、お前達はそうして欲しいと思わなかった。
35 見よ、お前達の家はお前達に見棄てられる。お前達に言うが、こう言う時が来るまでは私を見ることがない、『祝福あれ、主の名において来る者に』と」。

 本ペリコーペは、ヘロデの殺意を伝えに来たファリサイ派の人々とイエスの応えからなるアポフテグマ(31-33節)と、Q資料由来の預言的な言葉(34-35節)とで構成されている。
 このアポフテグマは、20世紀最大の新約学者であるR・ブルトマンも認めるように*1、釈義の困難な箇所である。以下において、まず我々の見解を略述することから始める。その後、語句の分析を中心に我々の見解の根拠を示す。語句の分析では、ルカに特徴的な表現が多く含まれることが確かめられる。最後に簡単に論点を提示する。
 紙幅の関係上、他の注解書と重複する記述はなるだけ避ける。特に後半のQ由来の言葉については多く触れない。

*1:ブルトマン、61頁参照。