日本の名随筆「聖書」

isbn:4878936800

聖書
田川 建三

作品社
1999-06
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 今日は珍しく研究室に行かず、洗濯をした後も夕方まで部屋で本を読んでいた。この本は、「日本の名随筆」というシリーズ物の一冊で、いろんなテーマごとにそのテーマを扱った随筆が集められている。実はこの「聖書」の巻以外は見たことすらないのだが、目録を見た限りでは、最初の100冊は「春」「夏」「命」「商」「毒」「岬」など一文字のテーマが並んでいる。「岬」の編者はもちろん中上健次である。その後別巻として続けられたようだが、こちらも「囲碁」「昭和」「学校」など二文字のテーマで100冊続いてしまった。その別巻の一番最後の締めくくりとして選ばれたのが「聖書」というテーマだったというわけだ。北村透谷から与謝野晶子内村鑑三矢内原忠雄太宰治遠藤周作などなど、文学者や小説家、クリスチャンの知識人などの随筆が収録されている。なんといっても編者田川さんの解説つきなのが面白い。気になったものを3分の1ほど読んだのだが、徳富蘆花のものなどを読みながら、文語の美しさをあらためて感じさせられた。与謝野晶子といえば吉永小百合演じる『花の乱』のイメージが強いのだが(有島武郎役の松田優作目当てで観た。晶子と武郎は同い年!)、こんなにも明解で思い切りのよい主張をしていたのかと驚く文章だった。田川さんがモデルにされたのではと噂された聖書学者(田川さんは否定している)が登場する遠藤周作の『死海のほとり』も全体を読んでみたくなった。