最高の出会い!

部屋に戻ってムハンマドにもらったキャンディを舐めていると無性に眠くなって、1時間半ほど仮眠を取ることにした。ところが、目覚ましの音が聞こえなかったようで、焦って目を覚ましたら約束の時間の20分前だった。図書館まで10分もかからないことはわかっていたが、すぐに用意して図書館に向かった。
 幸いムハンマドはまだ来ておらず、ムハンマドが座っていた席で本を読みながら待つことにした。ほどなくして窓を叩く音がするので見てみるとムハンマドだったので、外に出て食事に出かけた。ぼくがアラビア料理が食べたいとリクエストしていたので、ムハンマドの寮の近くの食堂に連れて行ってくれた。注文も彼がしてくれて、テーブルまで持ってくるのも彼がしてくれた。その上、いくらかかったか教えてくれ、払うから、と言っても、自分が招待したんだから、と言って頑として受け取ろうとしなかった。料理ができるのにちょっと時間がかかったのだが、待ち時間のためにフライドポテトまで買ってきてくれたのだった。そのホスピタリティにいたく感激した。アラビア料理もとてもおいしかった。名前を教えてもらったが忘れてしまった。クレープよりももっとしっかりした生地で野菜や牛肉を細長く包んだもの。2本目は牛肉ではなくてトウモロコシを加工したものが入っていた。2本も食べるとしっかりお腹いっぱいになったのだが、ムハンマドがもういらないのか?と何度も訊いてきて、部屋に持って帰ればいいから、と言ってもう一本おごってくれた。
 荷物を置いていたので図書館に戻り、ムハンマドが図書館の中を案内してくれた。自分でもある程度見て回っていたのだが、ムハンマドが案内してくれたお陰で、奥の個室は院生のための部屋であることがわかった。写真も撮ってもらった。ムハンマドの友人の女性に二人の写真も撮ってもらった。図書館は11時には閉まるので、また寮に向かうことにした。
 寮の売店で飲み物を買い(これも彼のおごり!)、外で腰掛けて話をした。ムハンマドはマレーシアに来て5年になるのだが、マレーシアに来た理由は、フセインに反対したことで命の危険があったからだそうだ。5年間で一度も帰っておらず、あのような状態では電話もできずに、家族の安否もわからないそうだ。まだ小学生、中学生くらいの弟もおり、引退した父親もいるのだから、随分と心配していることだろう。ムハンマド奨学金はもらっておらず、かといってイスラームの文化では借金は恥ずべきことだということらしいので、働いて学費を稼いでいるそうだ。自分がなんと気楽で安穏とした大学生活を送ってきたかということを恥ずかしく思った。そして、彼の考え方の中心には常にイスラームがあった。イスラームの授業で何人ものムスリムに会ってはいたが、ムハンマドと出会って初めて、本物のムスリムに出会ったという思いがした。女性がうるさくおしゃべりをしたり無駄に買い物好きであったりするのを嫌うことや、寮の周りで遅くまでバイクの騒音を立てたり騒いだりするのに腹を立てることなどで意気投合した。部屋の場所を教えてもらい、再会を約束して別れた。