isbn:4400121135
またまたトロクメさんの本。5月に読み始めた記録があって、その後も度々部分的に読んだりしてたが、今回改めて始めから最後まで読んだ。かなり
プロテスタントの護教的な内容である。正典
福音書は4つあってそれぞれかなり違っているけれど、それらは同一の聖書を権威とし、同一の神を主張し、同一のキリストについて述べ、同一の霊について語っているのだ、という。第一章で四つの
福音書が存在するに至った経緯を説明するところでは、各
福音書がそれぞれの地方特有の
福音書として成立したのだ、という認識が興味深かった。その後、各
福音書の構造と資料、思想について1章ずつ割いて説明されていくのだが、ここは特に新しさを感じない。ルカ
福音書は「
テオフィロへの
福音書」と呼ばれ、
使徒行伝とセットで考察されている(だから訳者の加藤さんは『新版 総説
新約聖書』でゴネたのか?)。当然のことながら、有名なトロクメ仮説が反映された解説であり、トロクメのそれぞれの
福音書に対する考えを知ると言う意味では手軽な著述なのだろうが。コンパクトな記述なので、説得的に自説を展開するというような余裕はない。巻末の聖書索引からもわかるように、
福音書と行伝の殆ど全ての箇所がなんらかの形で言及されている。
「四つの
福音書」だけでやめておいてくれたら良かったのに、なんで「ただ一つの信仰」なんて余計なものを付け足したんだろう、という印象。もっとも、著者としてはそれが言いたいがためにこの本を書いたんだろうが。ここまで護教的な人だと知ってちょっとびっくり。年のせい?