文法書と対観表

 今日は新約概論がなくてギリシャ語だけの日だったので、引き続き新約学の基礎の基礎についてレクチャーしてもらう。前回は新約のテキストとギリシャ語の辞書の話で、ネストレ27版とIntermediateを購入した。今回は文法書とシノプシスの話。まずは道具を揃えなければ、ということで。文法書は何を使うか、と聞かれて答えられず。答えはBlass-Debrunnerのもの。

Grammatik Des Neutestamentlichen Griechisch

Grammatik Des Neutestamentlichen Griechisch

Rehkopfが改訂を引き継いでいるが、たいてい呼び名に入れてもらえないらしい。Bl-Dのように略記されるそうだ。土岐健治『新約聖書ギリシア語初歩』にあるようにRehkopfが「改悪」したからか。Funkが英訳している。英語のものでは、前回VGTについて教えてもらった時に聞いたMoulton-Howardのもの。これを「ムールトン」と言ったら何度も聞き返されて、「モールトン」だ、と訂正された。これは、第一巻がProlegomenaで、モールトンが気付いたことが色々と書かれていて面白いところもあるが、Bl-Dのように網羅的に文法事項が解説されているわけではないので、知りたいことが載ってないことが多いらしい。三、四巻となるにつれて論文集のようになってしまって、あまり文法書としての価値はないとのこと。
 次に必要な道具として言われたのが、共観福音書の対観表。何を使っているかと言われて、日本語と並べられているもの、と答えたら、そんな無駄なのはよせ、と言われた。Alandが編集しているギリシャ語だけのものが現在は定番らしい。

Synopsis Quattuor Evangeliorum (Bible Students)

Synopsis Quattuor Evangeliorum (Bible Students)


しかし、これは本来共観福音書だけでいいものにヨハネ福音書までくっつけてしまっているため、非常に見にくいとのこと。ヨハネ福音書の似たような記事はN-Aを並べて見ればいいんであって、その点で見やすかったのがHuck-Lietzmannのものだそうだ。しかし、これもGreevenが編集するようになって、Aland版に対抗してヨハネ福音書を入れたもんだから、良さが失われてしまった。そうすると、アパラトゥスの充実しているAland版を使うということになる。
 ギリシャ語の授業の後、新約学の基礎の基礎の授業の前に、新約聖書概論の話にもなった。きっかけは、ギリシャ語の授業に参加して下さってる方のひとりが、今日は新約概説の授業はないですね、と仰ったことだった。先生が、新約概<説>ではなくて新約概<論>だ、と訂正し、そういえば前田護郎の本は『新約聖書概説』だったな、ということになった。先生が学生の時に、概論と概説はどう違うんですか、と質問したところ、EinleitungとEinfuehrungの違いだ、と言われたそうだ。では、EinleitungとEinfuehrungはどう違うんですか、と聞いたら、もう答えてくれなかったそうだ。
 概論の基本的な本は何か、と聞かれた。『書物としての〜』に3つほど挙げてあったのを思い出し、以前にメールで教えていただいた時に慌てて英訳本からでも読もうとして叱られたことを思い出したが、誰のものだったか思い出せない。苦し紛れにコンツェルマンと答えたら、カ行違いでキュンメルだった。これはFeine-Behm-Kuemmelと継承されてきたもの。もう一冊は、Knopf-Lietzmann-Weinelの流れのもの。前者がEinleitungで後者がEinfuehrungで、後者の方が時代史を含んでいたので、より広範囲に扱っているものをEinfuehrungと呼ぶと勘違いして『新約聖書概説』という書名にしたのではないか、ということだった。概論についてはいずれしっかり教えて下さるとのこと。その時また忘れてたら大変だ。